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墓じまいに親族全員の同意は要るのか|改葬許可の申請で、法令が書類を求める相手を確かめる

墓じまいを切り出したら、ふだん墓に関わらない親族から反対された。そのとき浮かぶ疑問が「親族全員の同意は、法律で必要なのか」です。

この記事は、その疑問のうち「法令の本文に何が書いてあるか」だけを確かめます。見るのは、改葬許可の申請で、誰の名前と、誰の書面を求めているか、です。

この記事が確かめること、確かめないこと

確かめるのは、次の二つの法令です。

施行規則は、法律の細かい手順を、国の省庁が定めた決まりです。

確かめないことは、三つあります。

施行規則には、第二条とは別の場合(たとえば、死亡者の縁故者がいない墓)を定めた条文もあります。それも、この記事では扱いません。

この記事に書いていないことは、やっていない、存在しない、という意味ではありません。

条文は改正されることがあります。この記事は、2026-11-03に確かめた本文にもとづいています。

先に、言葉を五つだけ

法律の言葉は、そのままだと読みにくいものです。先に、五つだけ意味を確かめます。

改葬埋葬した遺体や、墓や納骨堂に納めた遺骨を、別の墓や納骨堂へ移すことです。法律の第二条第三項に定義があります。「墓じまい」は、この法律に定義がある言葉ではありません。遺骨を移す手続きが「改葬」で、その許可を役所が出します。
墓地使用者その墓の区画を使う権利を、墓地の管理者から得ている人です。一般に、墓の「名義人」と呼ばれる立場にあたります。この二つの法令には、誰が墓地使用者になるかを定める条文がありません。誰が墓地使用者なのかは、法令の本文からは分かりません。
墓地使用者等施行規則の言い方で、「墓地使用者」と「焼骨収蔵委託者」をまとめた呼び名です。焼骨は、火葬したあとの遺骨のことです。焼骨収蔵委託者は、納骨堂に遺骨を収めることを頼んだ人にあたります。
墓地等の管理者墓地や納骨堂を管理している側です。寺院墓地なら寺院、霊園なら霊園の運営者がこれにあたります。
祭祀承継者先祖をまつるための墓や仏壇などを受け継ぐ人を指す言葉です。この記事で確かめる二つの法令の本文には、この言葉は出てきません。

改葬の許可は、どの市町村に出すか

法律の第五条第一項は、改葬を行おうとする者は、市町村長の許可を受けなければならない、と定めています。市町村長には、特別区の区長も含まれます。

どの市町村長が許可を出すかは、第二項にあります。改葬については「死体又は焼骨の現に存する地の市町村長」です。遺骨がいまある場所の市町村長、という意味です。移し先の市町村ではありません。

許可を与えるとき、市町村長は改葬許可証を交付します。これは第八条の定めです。

申請書に書く事項(施行規則 第二条 第一項)

改葬の許可を受けようとする者は、決められた事項を書いた申請書を、市町村長に出します。第二条第一項が、書く事項を七つ挙げています。

死産の場合は、書く内容が一部変わります。この記事では扱いません。

続柄は、亡くなった方と申請者との間柄のことです。【7】で氏名を書くのは、申請者です。墓地使用者等は、申請者との「関係」を書くために出てきます。

申請者以外の親族の氏名や連絡先を書く項目は、七つのどれにもありません。

添付する書類(施行規則 第二条 第二項)

申請書には、書類を添えます。第二項は三つの書類を挙げています。

【1】墓地等の管理者の書面

埋葬は遺体を土に葬ること、埋蔵は遺骨を墓に納めること、収蔵は納骨堂に納めることです。その事実を、墓地等の管理者が書面で証明します。

これによりがたい特別の事情がある場合は、市町村長が必要と認める、これに準ずる書面でもよい、と同じ号に書かれています。

【2】墓地使用者等の承諾書

第二号は「墓地使用者等以外の者にあっては」で始まります。つまり、申請する人が墓地使用者等ではない場合の定めです。そのとき添えるのは、墓地使用者等が改葬について承諾したことを示す承諾書です。

条文の文言は「墓地使用者等の改葬についての承諾書」です。親族一般の承諾書とは書かれていません。

同じ号には、承諾書と並べて「これに対抗することができる裁判の謄本」なども書かれています。謄本は、原本の内容を全部写した書類のことです。どんな裁判を指すかは、この記事では扱いません。

【3】その他の書類

第三号は、市町村長が特に必要と認める書類です。条文は、その中身を挙げていません。ですから、第一号と第二号だけで全部、とは言えない条文です。

ここまでで言えること

第二条が、誰に何を求めているか。表にまとめます。

誰条文条文が書いていること
亡くなった方第一項 第一号から第四号本籍、住所、氏名、性別、死亡年月日、埋葬または火葬の場所と年月日を、申請書に書く
申請する人第一項 第七号住所、氏名、亡くなった方との続柄、墓地使用者等との関係を、申請書に書く
墓地等の管理者第二項 第一号埋葬、埋蔵または収蔵の事実を証する書面を作る
墓地使用者等第二項 第二号申請する人が墓地使用者等ではないとき、改葬についての承諾書が要る
市町村長第二項 第三号その他、特に必要と認める書類を求める
申請者以外の親族(なし)第二条に、申請書の事項としても、添付書類としても、出てこない

書類や承諾を求められている相手は、墓地等の管理者と、墓地使用者等です。申請書に氏名を書く人は、亡くなった方と申請者です。

二つの法令の本文には、「親族」「同意」という言葉そのものが出てきません。親族全員の同意書を、改葬許可の添付書類として求める文言は、第二条にありません。

ただし、言えるのはここまでです。三つの点が残ります。

法令の要件と、親族への説明は別の話

ここまで見たのは、役所に出す申請の書類の話です。次の三つは、別々の話です。

許可の書類に書かれていないことと、親族が納得することは、別の話です。前者は、条文を読めば確かめられます。後者は、条文を読んでも分かりません。

この記事は、親族に知らせるかどうか、どう知らせるかの判断には立ち入りません。条文が何を求めているか、という事実までを書きました。

出典と確認日

条文は、どちらもe-Gov法令検索の本文で確かめました。

名義URL確認日
墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号)第二条第三項・第五条・第八条/e-Gov法令検索https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC00000000482026-11-03
墓地、埋葬等に関する法律施行規則(昭和二十三年厚生省令第二十四号)第二条/e-Gov法令検索https://laws.e-gov.go.jp/law/323M400001000242026-11-03

この町で石工事業の許可を持つ事業者

改葬の許可は、役所の手続きです。墓石の撤去や新しい墓の工事には、別に、工事をする事業者が関わります。

石屋マップは、都道府県が公開している建設業許可業者名簿をもとに、石工事業の許可を持つ事業者を、市区町村ごとに並べています。石屋マップのトップから、市区町村を選べます。

この名簿は、この記事の答えの付録です。石工事業の許可を持っていることは、墓石を扱っていることと同じ意味ではありません。許可の意味は、解説ページにまとめています。

名簿には、国土交通大臣の許可を受けた事業者と、建設業の許可を持たない石材店は含まれていません。「一社もない」と表示されている市区町村も、この範囲での話です。