墓じまいに親族全員の同意は要るのか|改葬許可の申請で、法令が書類を求める相手を確かめる
墓じまいを切り出したら、ふだん墓に関わらない親族から反対された。そのとき浮かぶ疑問が「親族全員の同意は、法律で必要なのか」です。
この記事は、その疑問のうち「法令の本文に何が書いてあるか」だけを確かめます。見るのは、改葬許可の申請で、誰の名前と、誰の書面を求めているか、です。
この記事が確かめること、確かめないこと
確かめるのは、次の二つの法令です。
- 墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号)の第二条第三項、第五条、第八条
- 墓地、埋葬等に関する法律施行規則(昭和二十三年厚生省令第二十四号)の第二条
施行規則は、法律の細かい手順を、国の省庁が定めた決まりです。
確かめないことは、三つあります。
- この二つ以外の法律
- 墓地や霊園ごとの規則、使用の契約の内容
- 親族にどう伝えるか、どう話し合うか
施行規則には、第二条とは別の場合(たとえば、死亡者の縁故者がいない墓)を定めた条文もあります。それも、この記事では扱いません。
この記事に書いていないことは、やっていない、存在しない、という意味ではありません。
条文は改正されることがあります。この記事は、2026-11-03に確かめた本文にもとづいています。
先に、言葉を五つだけ
法律の言葉は、そのままだと読みにくいものです。先に、五つだけ意味を確かめます。
| 改葬 | 埋葬した遺体や、墓や納骨堂に納めた遺骨を、別の墓や納骨堂へ移すことです。法律の第二条第三項に定義があります。「墓じまい」は、この法律に定義がある言葉ではありません。遺骨を移す手続きが「改葬」で、その許可を役所が出します。 |
|---|---|
| 墓地使用者 | その墓の区画を使う権利を、墓地の管理者から得ている人です。一般に、墓の「名義人」と呼ばれる立場にあたります。この二つの法令には、誰が墓地使用者になるかを定める条文がありません。誰が墓地使用者なのかは、法令の本文からは分かりません。 |
| 墓地使用者等 | 施行規則の言い方で、「墓地使用者」と「焼骨収蔵委託者」をまとめた呼び名です。焼骨は、火葬したあとの遺骨のことです。焼骨収蔵委託者は、納骨堂に遺骨を収めることを頼んだ人にあたります。 |
| 墓地等の管理者 | 墓地や納骨堂を管理している側です。寺院墓地なら寺院、霊園なら霊園の運営者がこれにあたります。 |
| 祭祀承継者 | 先祖をまつるための墓や仏壇などを受け継ぐ人を指す言葉です。この記事で確かめる二つの法令の本文には、この言葉は出てきません。 |
改葬の許可は、どの市町村に出すか
法律の第五条第一項は、改葬を行おうとする者は、市町村長の許可を受けなければならない、と定めています。市町村長には、特別区の区長も含まれます。
どの市町村長が許可を出すかは、第二項にあります。改葬については「死体又は焼骨の現に存する地の市町村長」です。遺骨がいまある場所の市町村長、という意味です。移し先の市町村ではありません。
許可を与えるとき、市町村長は改葬許可証を交付します。これは第八条の定めです。
申請書に書く事項(施行規則 第二条 第一項)
改葬の許可を受けようとする者は、決められた事項を書いた申請書を、市町村長に出します。第二条第一項が、書く事項を七つ挙げています。
- 【1】死亡者の本籍、住所、氏名、性別
- 【2】死亡年月日
- 【3】埋葬または火葬の場所
- 【4】埋葬または火葬の年月日
- 【5】改葬の理由
- 【6】改葬の場所
- 【7】申請者の住所、氏名、死亡者との続柄、墓地使用者等との関係
死産の場合は、書く内容が一部変わります。この記事では扱いません。
続柄は、亡くなった方と申請者との間柄のことです。【7】で氏名を書くのは、申請者です。墓地使用者等は、申請者との「関係」を書くために出てきます。
申請者以外の親族の氏名や連絡先を書く項目は、七つのどれにもありません。
添付する書類(施行規則 第二条 第二項)
申請書には、書類を添えます。第二項は三つの書類を挙げています。
- 【1】墓地等の管理者が作った、埋葬、埋蔵または収蔵の事実を証する書面(第一号)
- 【2】墓地使用者等以外の者にあっては、墓地使用者等の改葬についての承諾書(第二号)
- 【3】その他、市町村長が特に必要と認める書類(第三号)
【1】墓地等の管理者の書面
埋葬は遺体を土に葬ること、埋蔵は遺骨を墓に納めること、収蔵は納骨堂に納めることです。その事実を、墓地等の管理者が書面で証明します。
これによりがたい特別の事情がある場合は、市町村長が必要と認める、これに準ずる書面でもよい、と同じ号に書かれています。
【2】墓地使用者等の承諾書
第二号は「墓地使用者等以外の者にあっては」で始まります。つまり、申請する人が墓地使用者等ではない場合の定めです。そのとき添えるのは、墓地使用者等が改葬について承諾したことを示す承諾書です。
条文の文言は「墓地使用者等の改葬についての承諾書」です。親族一般の承諾書とは書かれていません。
同じ号には、承諾書と並べて「これに対抗することができる裁判の謄本」なども書かれています。謄本は、原本の内容を全部写した書類のことです。どんな裁判を指すかは、この記事では扱いません。
【3】その他の書類
第三号は、市町村長が特に必要と認める書類です。条文は、その中身を挙げていません。ですから、第一号と第二号だけで全部、とは言えない条文です。
ここまでで言えること
第二条が、誰に何を求めているか。表にまとめます。
| 誰 | 条文 | 条文が書いていること |
|---|---|---|
| 亡くなった方 | 第一項 第一号から第四号 | 本籍、住所、氏名、性別、死亡年月日、埋葬または火葬の場所と年月日を、申請書に書く |
| 申請する人 | 第一項 第七号 | 住所、氏名、亡くなった方との続柄、墓地使用者等との関係を、申請書に書く |
| 墓地等の管理者 | 第二項 第一号 | 埋葬、埋蔵または収蔵の事実を証する書面を作る |
| 墓地使用者等 | 第二項 第二号 | 申請する人が墓地使用者等ではないとき、改葬についての承諾書が要る |
| 市町村長 | 第二項 第三号 | その他、特に必要と認める書類を求める |
| 申請者以外の親族 | (なし) | 第二条に、申請書の事項としても、添付書類としても、出てこない |
書類や承諾を求められている相手は、墓地等の管理者と、墓地使用者等です。申請書に氏名を書く人は、亡くなった方と申請者です。
二つの法令の本文には、「親族」「同意」という言葉そのものが出てきません。親族全員の同意書を、改葬許可の添付書類として求める文言は、第二条にありません。
ただし、言えるのはここまでです。三つの点が残ります。
- 【1】第三号があるため、第一号と第二号だけで全部とは言えません。
- 【2】墓地使用者等が亡くなっている場合の扱いは、第二条には書かれていません。
- 【3】窓口が実際に何を求めるかは、条文の本文からは分かりません。申請書の様式や案内は、市町村ごとに定められています。
法令の要件と、親族への説明は別の話
ここまで見たのは、役所に出す申請の書類の話です。次の三つは、別々の話です。
- 【1】役所が求める書類。この記事で、条文の本文を確かめた範囲です。
- 【2】墓地や霊園の管理者との取り決め。墓地ごとの規則や、使用の契約の内容です。この記事では見ていません。
- 【3】親族への説明と、親族の受け止め。条文の本文からは出てきません。
許可の書類に書かれていないことと、親族が納得することは、別の話です。前者は、条文を読めば確かめられます。後者は、条文を読んでも分かりません。
この記事は、親族に知らせるかどうか、どう知らせるかの判断には立ち入りません。条文が何を求めているか、という事実までを書きました。
出典と確認日
条文は、どちらもe-Gov法令検索の本文で確かめました。
| 名義 | URL | 確認日 |
|---|---|---|
| 墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号)第二条第三項・第五条・第八条/e-Gov法令検索 | https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000048 | 2026-11-03 |
| 墓地、埋葬等に関する法律施行規則(昭和二十三年厚生省令第二十四号)第二条/e-Gov法令検索 | https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100024 | 2026-11-03 |
この町で石工事業の許可を持つ事業者
改葬の許可は、役所の手続きです。墓石の撤去や新しい墓の工事には、別に、工事をする事業者が関わります。
石屋マップは、都道府県が公開している建設業許可業者名簿をもとに、石工事業の許可を持つ事業者を、市区町村ごとに並べています。石屋マップのトップから、市区町村を選べます。
この名簿は、この記事の答えの付録です。石工事業の許可を持っていることは、墓石を扱っていることと同じ意味ではありません。許可の意味は、解説ページにまとめています。
名簿には、国土交通大臣の許可を受けた事業者と、建設業の許可を持たない石材店は含まれていません。「一社もない」と表示されている市区町村も、この範囲での話です。